「滝の原主義とは何そ」に関する個人的考察
まず初めに16年間の宇高在勤中にお世話になった生徒・保護者の皆様、サポートしてくださった教職員諸氏、そして、物心両面にわたり宇高生を支援してくださった数多くの同窓生に心より感謝申し上げます。
今回は在職中の日々を振り返り、いくつかの時期に区切って、心に残る思いを述べていきたいと思います。
まずは赴任してからの数年について。短い言葉で言うと、生徒たちに助けられ、育てられたという日々でした。教員として、人間として甚だ力不足であった私が、宇高で勤務を続けられたのは生徒たちのお陰でした。授業はもちろんのことホームルームや部活動などあらゆる場面で何もできない私を見て、生徒たちがそっと後押ししてくれました。特に授業に関しては、レベルの低い授業の内容や試験の問題に対して、暖かくも厳しい反応をしてくれたおかげで、自らを見つめなおして、研鑽を積むことができました。
次に同窓会主任になってからの日々について。齋藤一郎前会長の就任と時を同じくして同窓会主任になったことは、私の人生にとってかけがえのない経験となりました。当初は自分のような若輩が大先輩の皆様を前にして会を運営することが大変なプレッシャーでした。本部の総会や十年会、各支部会において、先輩方に多大なるご迷惑をおかけしたことを心よりお詫び申し上げます。また、小菅元会長、齋藤前会長、増田現会長には心よりお礼を申し上げます。私のような人間に対して、まさに「天空海濶の襟度」を持つ同窓生の皆様が、会の運営に際して暖かくご支援くださったお陰で何とか主任という役目を務めることができました。そして何より幸運だったことは、多くの同窓生とお見知りおきになることができたことです。「活躍的精神に富み、気概心があり、高潔な」先輩方との交流によって、自らの不甲斐なさや薄志弱行で陋劣な心性に気が付くことができました。
最後に荒井退蔵先輩の事績を学んでからの数年について。滝の原に赴任してから多くの「人物」と出会い、生徒がそのような「人物」になるにはどのような手助けができるのか、自問自答してきました。その中で、荒井先輩が人生を賭して疎開事業を進め、多くの沖縄県民を救った事実を知ることによって、これまで抱えてきた最大の疑問を解決する糸口が見えたような気がしました。
「人物を作らんとするにあり」。宇高の教育はすべて、その言葉に集約されていると考えていた私の中で、「人物」を作るにあたっての自らの考え方が完全に覆り、主客が逆転したのも、荒井先輩の事績に触れた結果でした。自分が主体なのではなく、主体は生徒であり他者である。そのことが理解できた日から、自らの行動に迷いがなくなりました。生徒のために何ができるか、宇高のために何ができるか、社会のために何ができるか。笹川臨風先生に始まり、山本作郎先生、石川格先生。歴代の校長先生たちに脈々と受け継がれてきた「滝の原主義」の一端に触れたような気がしました。
まとまりのない話でしたが最後に、これまでお世話になったすべての方々に感謝を申し上げるとともに、今後は一人の同窓生として、そして教育に携わるものとして「人物を作らんと」邁進していきたいと考えております。
蛇足ですが、宇高時代を振り返った私の記事が9月6日(金)付の朝日新聞に掲載されました。ご興味がおありになれば朝日新聞デジタルをご覧ください。
URLは右の通りです。 https://www.asahi.com/articles/ASS950PNTS95UUHB002M.html
森田 泰典(平成6年卒)