
首都圏研修C班 体験記(後編) 東京学芸大学で教育と歴史学について考える
(前編はこちら)
2024年12月2日(火)午後、私と私の1年後輩である林尚示さんとで、宇高首都圏研修C班を、二人の勤務校である東京学芸大学でお迎えしました。
東京学芸大学は、東京都小金井市に位置する、教員養成を主たる目的とする教育学部だけの単科大学です。一昨年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で日本を優勝に導いた栗山英樹監督や、昨年のパリオリンピック女子柔道48kg級で金メダルを獲得した角田夏実選手の活躍のおかげで、宇高の同窓生の皆様にも、東京学芸大学の名前を耳にされた方もいらっしゃるかと思われます。教育学部だけの単科大学ですので、教育学を専攻する林さんが在籍されることにはどなたも疑念を抱かれないでしょうが、なぜ歴史学(中国古代史)を専攻する私が教育学部に在籍しているか疑問を持たれる方もおられるかと思いますので、まずは東京学芸大学の紹介を兼ねて、その辺りの事情を説明させていただきたいと思います。
これは、首都圏研修の際に、後輩諸君にもしたのですが、現在日本国内で「教育学部」という場合、学校の教師を養成する東京学芸大学におかれているような教員養成を主目的とする「教育学部」と、教育に関する事象を学術的に研究することと教育学研究の後継者養成を目的とする「教育学部」に大別することができます。後者の教育学部には、教育史の研究者はおられますが、私のような歴史学プロパーの研究者には居場所はありません。しかし、小学校・中学校・高等学校の教師が担う教育内容は多岐に亙ります。当然、教育の内容、すなわち歴史ばかりではなく、様々な教科のもととなる基礎的な知見を学ぶことが求められます。そのため、教員養成を主目的とする教育学部には、様々な学問領域を専攻する研究者が所属しておりまして、私のような者にも、居場所がある、ということになるのです。
さて、宇高の首都圏研修を東京学芸大学でお引き受けするようになったのは、コロナ禍の前年の2019年からで、その時から、一橋大学の黒崎卓先輩に午前中をお引き受けいただき、午後を東京学芸大学がお引き受けする、という形で、国立市と小金井市という地理的近接さを活用して実施しています。学芸大での研修は、林さんからは教育学に関する講話、私からは、歴史学や中国問題に関する講話(というかおしゃべり)をさせていただいています。年によって、後輩諸君の反応は様々ですが、今年は、どちらかというと午前中の一橋大学に惹かれてか、経済学や広く社会科学に関心のある生徒さんが多かったようで、一部の熱心な方を除くと、特に私の話はあまり響かなかったようで、反省を深めているところではあります。
実は、私の学年の前後には、日本史学を中心に、宇高の先輩・後輩で、歴史学者として活躍している卒業生は多く、後輩諸君にも、歴史に関心のある人には是非歴史研究の道を選んでもらえればな、と思っています。今年の研修も、もちろん林さんと相談しながら、充実したものにしていこうと思いますが、私としては今まで以上に、歴史学の魅力を伝えられる内容にしていかないといけないな、と思っているところです。
小嶋茂稔(昭和62年卒)


