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“困ったちゃん”な高校生が25年たったらエンタメ産業第一人者になっていた件

平成11年卒の中山淳雄と申します。15年のサラリーマン生活に終止符をうち、エンタメ社会学者として独立し、日本のアニメ・マンガ・ゲームなどのエンタメ産業の海外化を支援する仕事を、起業したRe entertainment、経産省コンテンツ課のプロジェクト、慶應大学の教員として3足わらじでやっております。昨年の東京支部総会に引き続き、今度は宇高生に講演する機会を得ましたので報告させていただきます。
29歳、39歳の時と10年会で2度ほど訪れたとはいえ、高校時代に思いをはせるのはおよそ20年ぶり。自分が学生のときには成功OBが母校を懐かしみつつ講演会、といわれてもいまいちピンときていなかったことも念頭において、どうしたら今の高校生にも身になるような話ができるかなと思い、「“困ったちゃん”な高校生が25年たったらエンタメ産業第一人者になっていた件」という講演にさせていただきました。

というのも、こんな講演会でお話させていただくのが恥ずかしくなるほど、自分の高校時代は「灰色」で「みそっかす」だった思い出ばかりが駆け巡ります。中学までは自分がデキるやつだと思っていたのに高校入って最初の順位が250位/300人だったときの衝撃、サッカー部でもうまくいかずに途中で退部。大学受験は5つの大学全て落ちて、あっさりと浪人生活に入ります。なりたい職業があったわけではないですし、大学にいってもなんとなく自信なさげに自分の居場所を探し続けていたような気もします。
社会人になって一つ一つ石を積み上げるように実績を重ねて、DeNA・バンダイナムコ・ブシロードといった企業で、カナダやシンガポールにも赴任し、私にとって仕事とは成果によって自分の自信を築き上げる作業でした。面白い出会いとエキサイティングな仕事の連続のなかで、後天的に形成された私の「人格」は、ついに同じ宇高出身で県庁職員だった父の「ちゃんとした仕事に就けよ。間違ってもベンチャーなんかにいくなよ」という“大人の言葉”を破り、「エンタメ社会学者」という他に同じ職種がみあたらない名前で起業までしてしまいました。

バンダイナムコスタジオ時代にカナダでの生活を朝日新聞:宇都宮高校「青春スクロール」に取り上げて頂きました

そもそも人生の岐路は今準備しようのない「完全な想定外の連続」の先にあります。いまの学生の皆さんには、僕がMBA時代に「これだ!」と思ったヘンリー・ミンツバーグ教授の「Strategy Map」というのをお伝えしました。自分の決めた道に、どれだけ想定外を取り込みながら、軌道修正していった先に、本当の道がある、という話です。想定以上に反響もあり、なによりVTuberの話があまりに刺さったようで、講演終了後20人以上に取り囲まれ1時間以上もアフタートークが途切れなかったことはひそかな自信になりました。

早稲田や慶應で教員をやってきてわかったのですが、「教わりたい人」以上に「教えたい人」はいっぱいいます。こういう講演の機会は自分の半生を振り返る良い機会になりましたし、いまの16~18歳がどれだけVTuberやトレーディングカードゲームに影響を受けているか、何を考えているかを学ぶ、私自身にもよい機会になりました。ぜひ先生方にはこういう機会を現役の学生たちのためのみならず、OB達のためにも開拓し続けて頂ければと思います。

中山淳雄
エンタメ社会学者。事業家(エンタメ企業のコンサルを行うRe entertainment創業https://www.reentertainment.online/ )と研究者(早稲田博士・慶應・立命館大研究員)、記者、政策アドバイザー(経産省コンテンツIPプロジェクト主査)を兼任しながら、コンテンツの海外展開をライフワークとする。以前はリクルートスタッフィングから転職し、DeNA・デロイト・バンダイナムコスタジオ・ブシロードで北米、アジア向けのメディアミックスIPプロジェクトを推進&アニメ・ゲーム・スポーツの海外展開を担当してきた。著書に『エンタメビジネス全史』『エンタの巨匠』『推しエコノミー』『オタク経済圏創世記』(日経BP)、『ボランティア社会の誕生』(日本修士論文賞受賞作、三重大学出版会)など。