会員投稿

会員投稿④ 航空業界での仕事

宇都宮高校の在校生の皆さん、初めまして。昭和62年卒業・現在 日本航空でパイロットとして乗務している石川 宗です。ご縁があって2014年頃から宇高首都圏研修のお手伝いをさせてもらっています。

新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっている中、上京しての研修は残念ながら今年も中止されると伺いました。そこで、日本航空とパイロットの仕事について、この場を借りて簡単に紹介いたします。

さて皆さん『航空業界』についてどのようなイメージを持っていますか?

  国内外、さまざまなところに行けて楽しそう!

  客室乗務員の笑顔が素敵!

  テロが怖い!

などさまざまなイメージを持っていると思います。さて、その実態ですが…

概ね皆さんのイメージ通りだと思います。

私は現在ボーイング767型機に乗務しています。その前はボーイング747-400型機に乗務していました。それぞれの型式により飛ぶ路線が違うのですが、767では国内線や中距離国際線を担当しています。国内線では、北は女満別や旭川、南は那覇や石垣島など大小さまざまな空港に、また国際線ではVancouverやHonoluluを最長として東アジアや東南アジアの主要都市へフライトをしています。

一方の747-400では長大路線がメインでした。米州方面ではNew York経由São Pauloをはじめ、ChicagoやLos Angeles&Las Vegasなど、欧州方面ではLondon&ParisはもとよりMoscow・Rome・Milanなどなどさまざまな都市にフライトしていました。

定期便が就航している都市には、整備や空港責任者などJALグループ社員が必ず駐在しています。パイロットでなくても外国で働く可能性はあります。そのため、いろいろな場所へ出張・駐在して働きたい方にはうってつけの会社だと思います。

さて、どの業界でもそうだと思いますが、良い面ばかりなのか?というとそうではありません。航空業界も然り。テロや新型コロナウイルス、自然災害など、事前に予期できない出来事によるイベントリスクに大きな影響を受ける業界であることは事実です。

皆さんが生まれる前の出来事ですが、2001年9月11日にはアメリカで同時多発テロが発生しました。旅客機を使った卑劣なテロですが、このテロにより業界全体に非常に大きな影響を受けました。空港での保安体制が強化されたのはこのためです。

また、ご存じの通り日本航空は2010年に経営破たんを経験しています。リーマンショックの影響もありますが、イベントリスクに耐えられない脆弱な体質であったことは否めません。破たんを経験し、現在は筋肉質な経営体制に生まれ変わりました。

最後になりますが、皆さんのイメージとは大きく異なる部分を紹介します。それはパイロットの仕事や生活です。「給料が高くて派手な生活をしているんだろうなぁ!」と思っていませんか?残念ながらそんなに派手な職業ではありません。

年二回の航空身体検査を受けて基準を満たさなければ乗務することはできません。また年一回の路線審査(定期便の中で行われる審査)と定期審査(シミュレーターを利用した技能審査)にも合格し続けなければなりませんし、定期的な訓練も避けては通れません。給料は平均と比べると高額だとは思いますが、果たすべき責任を考えれば妥当な額だと個人的には感じています。

日々の生活の中で健康や怪我に気をつけ、パイロットとしての知識と能力を維持するには地道な努力は必要です。だからこそフライトを無事に終えた時の満足感や安心感は何物にも代えがたいものとなっています。

もちろん、日本航空にはパイロット以外にも多くの職種があります。文系理系問わず、どなたでも活躍の場があります。

また数年後、どこかでお話しできることを楽しみにしています。まずは残された高校生活を充実したものとしてください!